2012.4.16 UP
2019/01/03更新
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「JR電車編成表」の読み方

「JR電車編成表」とは、(有)ジェー アール アールが編集を担当し、現在はJR時刻表の発行元である交通新聞社が発行する鉄道書です。
JRグループのすべての電車の最新情報を、各配置区別、使用方別、実際に動く編成ごとにまとめてあります。
最新版の2011年冬版の場合、2011年10月1日現在、約2万2878両に及ぶ車両について、
パンタグラフ・冷房装置・トイレなどの位置はもちろん、機器の種類や車体の色までもが掲載されています。
凄いのは、それが直感的に見て取れるという点。
「ローマは一日にしてならず。」の言葉通り,30年を超える蓄積の上に生み出されたものです。
さらに本書には、新製・改造・転属・廃車車両の一覧まで、掲載されており、JR鉄道車両の「今」を最も端的に知ることができます。
JRグループ各社の取材協力により得られた最新の詳細データは信頼性が極めて高く、
「鉄」とりわけ「車両鉄」にとっては、欠くべからざる必携の書です。

■ JR電車編成表2011年冬版の主な内容
JR電車区所別配置表
JR電車番号順別配置表
新製車両(2011年度上期)一覧
廃車車両(2011年度上期)一覧
転属車両(2011年度上期)一覧
改造車両(2011年度上期)一覧
形式別両数と動向
 東北・上越新幹線車両一覧表
 東海道・山陽新幹線車両一覧表
 新幹線電車配置表
JR各社別配置両数一覧表
JR各電車区別配置両数一覧表

『JR電車編成表』は、
本文となる「JR電車編成表(=配置区所別配置表)」と、これを補完する「JR電車番号順配置表」「形式別 車号別 分類表」
などから構成されています。

まずは、本文となる「JR電車編成表(=配置区所別配置表)」から見てゆきましょう。
「JR気動車客車編成表」とは違い、配置区所別配置表自体が編成表のカタチで編成単位で編集されています。

1 会社順
北から、すなわち
JR北海道→JR東日本→JR東海→JR西日本→JR四国→JR九州 に並んでいます。
JR貨物が、貨物電車であるM250系を導入しましたので、これが最後に加わるようになりました。

2 配置区所順

新幹線を保有する会社は、まず新幹線から、あとはおおむね北から南へ、東から西へと並べてあります。
このこと自体は問題ないのですが、目的の電車がここにいるだろうという思い込みで探すと結構苦労します。

例えば、首都圏各地から成田空港へ向かうNEX(成田エクスプレス)は、千葉県内の電車区には配属されていません。
なんと神奈川県、大船にある鎌倉区に配属されているのです。
どういういきさつでこうなったのか。これを推理するのも「鉄」のおもしろさです。

3 配置区所略符号
JRの電車(新幹線を除く)、気動車、客車には、車体の下、隅のほうに「千マリ」とか「海カキ」とか謎の暗号が書かれてあります。
これは国鉄時代から続いているもので、配置区所略符号と呼ばれます。
国鉄時代は鉄道管理局+配置区所がこれでわかりました。
「千マリ」ですと千葉鉄道管理局の幕張電車区という具合です。
JRになってからもこの符号は引き継がれたのですが、鉄道管理局は消滅しましたので、
漢字の部分は、当然、新会社の組織に合わせて、その意味を新たにしています。
例えば「千マリ」自体は変化しませんでしたが、「千」については、千葉鉄道管理局→JR東日本 千葉支社を表すようになりました。
なお「マリ」については、現在は「幕張車両センター」となっています。
JR東海や、JR四国では、そのまま会社名を表しています。
「海カキ」は東海旅客鉄道株式会社 大垣電車区です。
ちなみに国鉄時代は「名カキ」でした。名古屋鉄道管理局の大垣電車区です。
「四カマ」は、かつての四国総局 高松運転所→JR四国 高松運転所と、その中身が変わっています。
ところで「本ミフ」ってわかりますか?
これは現在、JR九州 本社直轄の南福岡電車区を意味します。
国鉄時代は「門ミフ」つまり、門司鉄道管理局 南福岡電車区でした。
JR九州になってからも「本ミフ→北ミフ→本ミフ」とめまぐるしく変化しています。
「北ミフ」とは、北部九州地域本社 南福岡電車区。
でも「鉄」がみたら、「ミフ」だけで「南福岡電車区のことだな。」とすぐわかります。
読者の皆様も旅程表を組むときなど、
KIX(関西空港)などとメモされることがあると思うのですが、これも応用されてみてはいかがでしょう。
「鉄」にしかわからない暗号です。
でも、スケジュール帳に「18時 マリ」と書いて、奥さんにつまらん疑いを持たれぬよう…。

*資料1
1986年 国鉄時代の配置区所と、2011年現在のJR電車配置区所 一覧表

JRになって早20年あまり、それぞれ会社組織の改編や配置区所の統廃合などもあり、
とりわけJR西日本などでは、この符号もしょっちゅう、書き換えられています。
追いつくのが大変なくらいです。
想像するのも楽しいのですが、迷ったら、編成表(最新号)の目次を見るのが手っ取り早いですね。

4 系列
車両系列は編成図の左上に見出しのように書かれてあります。
優等列車用車両の配属があればそれを先にし、その後に普通列車用車両が並んでいます。
それぞれの中では、主力となる系列、おおむね新車系列が前に来るようになっています。
注目の車両系列が前に出てくる格好です。しかしこれはあくまで原則です。
誌上の限られたスペースを効率よく活かすために配列は適宜工夫されています。
なお、よほどの大所帯でない限り、系列がページをまたぐようなことはありません。

5 車体色
系列の下には、(湘南色)や(瀬戸内色)とイメージがわくように 車体色も記載されています。
湘南色といってイメージがわかないようなら、まだ「鉄」としての修行が足らないということになります。
もっともこの色をまとう首都圏の113系は姿を消しましたが、E231系もこのカラーの帯を継承しています。
編成表にはきちんと(湘南帯)と記されています。

ただ、特急などは複数の色あわせをして独自色となっているのが普通ですので、記載されていないこともあります。
また塗装を変更している過程においては、同一編成グループの中でも新旧二通りの塗装が見られるときもあります。
これらについては、編成毎に新塗装の日付が記載されていますので、そちらを参照します。

6 系列使用用途
特急列車用車両の場合、使用する特急列車名が挙げられています。
普通列車用車両の場合、使用路線が記載されています。

7 編成図
市販の大型時刻表にも、優等列車の編成図が載せられています。
基本的に発想は同じで4両編成ならば、
4つハコが並んでいてそこに情報が書き込まれています。
ただ、中身というかその情報の有り様は全くといっていいほど違います。
大型時刻表では「どこが指定席か?」ということが最重要事項となりますが、
JR電車編成表の編成図にあって、これは2次的なものにすぎません。

では、何が記載されているのでしょう。
上から下へと見てゆきます。

7-1 運行区間
特急「あさぎり」に使用されているJR東海371系(2012年春、引退)の場合ですと、

←新宿(小田急)    沼津、静岡、浜松→

と記載されます。特急「あさぎり」は沼津までのはずですが、371系は、ホームライナーとしても使用され、浜松まで遠征するのです。
普通電車についても同様です。例えば広島運転所の115系などは

←播州赤穂.岡山.広島            可部.下関→

とあります。西は播州赤穂.から東は下関までをカバーする編成(群)だということです。
もちろん1本の普通列車として通しで乗車できるわけではありませんが、
その編成の守備範囲がこれでわかります。

なお、この例からは、可部線にも入線するのだということがわかりますが、
呉線経由の運用があることはわかりません。6-系列使用用途の「使用路線」も必見です。

7-2 車体形状
四角いハコ状の図は、車体を横から見たイメージを簡略化したものと思っていただいて差し支えありません。
 ハコ(=車体)の上には、①集電装置  ②クーラー 
 ハコ(=車体)の中には、③運転台の向き(→矢印で表記) ④号車  ⑤形式 ⑥トイレの位置
 ハコ(=車体)の下には、⑦補助電源装置  ⑧コンプレッサー  ⑨動台車/付随台車(モーターの有無については車軸単位で)
等が記号化されて記載されています。

①集電装置、②クーラーについては、
そのイメージに合わせたカタチの記号(アイコン)になっているので、一目でわかります。
その記号が付いていなければ、その車両にはないということです。

それでは、ここに記載された情報について、上からとりあげてゆきます。

①集電装置(パンタグラフ) 

▼集電装置(パンタグラフ)の見分け方
ハコの上の( ◇ )がそれです。
同時に、下枠交叉式かシングルアーム式かもわかります。
下枠交叉式は(  )で、シングルアーム式は( く )で表されます。
(◇)の中に書き込まれた数字が16なら、
そのパンタグラフがPS-16形であることを表します。

②クーラー
イベント車、事業車はさておき、
今時、JR電車にクーラーが付いていない営業車はありません。(気動車にはあります))
新幹線のページでは、クーラーについて触れられてもいないほどです。
しかし在来線では、普通車はもちろん特急車についてもきちんと記載されています。
きちんとというのは他でもありません。
在来線用の電車に搭載されたクーラーは、新幹線と違ってカバーなどに覆われていないことがほとんどで、
その形状を外見上から区別してみることができます。
そして、それはその車体のアクセントとなるのみならず、その電車の来歴をも語る、車両研究の重要な要素となっているのです。

まず、その形態は4つに分類されます。
  集中式
  分散式
  床置式
  床下式   です。

▼クーラーの有無の見分け方
 ハコの上の■□がそれです。
同時に、クーラーが集中式か分散式かもわかります。
集中式は■で、分散式は□で表されます。
ロの中に書き込まれた数字は、その車体に搭載された分散形クーラーユニットの個数を表します。
床置式と床下式については、当然屋根の上にはなく、前者は車内、後者は床下にあるのですが、
編成表ではスペースの問題からすべて集中式、分散式と同じ位置に記載されています。
ロの中に上と書いてあれば床置式。下と書いてあれば床下式です。

③運転台
クハ、クモハなど運転台付きの電車なら、その向きを矢印で見分けることができます。
当然ですが、矢の先は外側に向かっています。
クモハ123形のような両運転台付車両では、当然のことながら、
ひとつのハコ(車両)に二つ、外向きの矢印がはいっています。

そんなものなくても良いではないかと思われるかもしれません。
しかし、片運転台付増結用車両など(例:JR四国7100形)、
これがあることによってどちらに連結されるかが決まります。

また、クハ、クモハなど運転台付きの電車が編成(ユニット)の中間にある場合など
(普段は使われることのない運転台ということになると思いますが)、
その向きから、その電車の来歴、あるいはこれからをうかがい知ることもできるのです。

また、113系などでは、そのヘッドライトがどのような形状かもわかります。ただ、
これは、1台1台個体差がありますので編成図ではなく車番7-5のところに記載されます。

⑥トイレの有無
トイレの有無は、ハコの下隅にある小さな■です。
位置も奇数側か偶数側かきちんと区別してあります。

⑦補助電源装置のタイプとその容量。
基本的に冷房装置用の電源となるものです。
古くはMG(電動発電機)で、これらについては、その発電容量をハコの中に数字で記入してあります。
今はその多くが静止形インバータとなりました。これらはハコの中にSCと記入してあります。
容量については欄外に記されていることもあります。

⑧コンプレッサーのタイプとその容量。
空気圧縮機で作り出された高圧空気は、主にブレーキに用いられます。
編成表には「C1」とか「C3」とか表記されます。
C1は1000l/min、C3は3000l/minという具合にその性能が記されています。
ただ、最近の電車はブレーキ力を電気に変換し、空気ブレーキの使用比率が減ってきていますので、
単純にブレーキ力とは考えないでください。

補助電源装置やコンプレッサーなどは、どうでもいいように思われるかもしれませんが、
これらも編成上のポイントであり、車両研究においても欠かせません。

7-3 号車とその順序

号車は大型時刻表における優等列車編成図では必須のポイントです。
そこから指定席車が何両あり、それがどこに配置されているかを判断するわけです。
「JR電車編成表」においても、号車は、優等列車については重要ポイントです。
ちなみに指定席車は号車を太字で表しています。
しかし普通列車において、グリーン車や指定席車を含んでいるのであればともかく、
そうでないのであれば、号車にこだわる意味はありません。

もっとも、山手線のように11両固定の編成しかないような路線であれば、
これは乗客にとって便利な情報となります。例えば
「④号車は出口に近い。」とかいうふうに乗車位置の目安にもなるわけです。

しかし様々な編成両数が走って来るのであれば、逆に混乱を招く恐れがあります。
ですから、号車を記入していないものも多いのです。

ただ、自分の撮った写真を整理するにあたっては、やはり号車はないと不便です。
私の場合、編成表の優等列車に付された号車同様、在来線車両も
適宜、号車を割り振って管理しています。

編成表でも、この号車を基準にしてくれたら良いと思うのですが、
常に左側を①号車というふうにはしていません。
編成表では、左側は奇数側、右側は偶数側として並べています。
JR電車編成表の編者が、いかに車両自体にこだわっているかがここからもわかります。

結果、新幹線については、左側が①号車となり、万事うまくいくのですが、
在来線の多くは右側が①号車となります。
(例外:札幌区、豊田区、松本区、など)
どちらでも良いじゃないかと言われそうですが、私としては
号車を基準にして欲しいという思いがあります。地図では「上が北」が大原則です。
「八重洲口から新幹線ホームを眺めていると意識して下さい。」
正確には北西を向いているわけですが、
「はやぶさ」も「のぞみ」も左側が①号車で、これが「南西より」となります。
そのまま地図上にイメージを重ねられるので把握しやすいのです。
しかし、JR編成表において、在来線の多くは逆になっています。
京都市左京区が、地図上は右にあるようなものです。

そんなわけで、私は「JR電車編成表」の天地をひっくり返してみることが多いのです。
そういえば、この間も電車でオバさんに
「いやっ、。 この電車の本読んでる人。 本ひっくり返して読んでるわ。!頭おかしいのとちゃう?」
という表情で見られてしまいました。
大変なことだとは思うのですが、左側①号車で再編集して欲しいと思うのは私だけでしょうか。

ちなみに、JR西日本の221系では奇数偶数の意味合いが変わってしまいました。

またJR九州では、そのオリジナルの新型車について、左側が偶数側になっています。
編成表では、従来の国鉄形の並びがベースになるので、左側が門司港方、右側が鹿児島方となりますが、
前述の新型車については、左側-奇数の原則は覆されています。

7-4形式
ハコの中に記載されているのは、まず形式です。
国鉄時代からJR電車にはクハ(制御車+普通車)とかクモニ(制御車+電動車+荷物車)とか、車体の有り様を示す符号が冠されています。
(例外:JR四国のオリジナル車 7000形など)
系列については、前述しましたが、
モハ113-2001 などと表記された
ハイフンより左側=カタカナ+3桁数字が形式となります。
よって、モハ113-2001はモハ113形です。

7-5 編成番号
国鉄時代、電車の顔に当たる部分には、車番を書かないのが普通でした。
当日(もちろん日付を跨ぐこともありますが)、その車両がどういう仕業に就くかは、
割り振られた運行番号で決まります。
国鉄時代は電車の前面には、この番号が表示されていました。
運転手さんはこの番号をみて、運転台に乗り込んでいたのです。
しかし、これは誰かが事前に運転台に乗り込んで番号をセットしていたわけです。
今はそんな非効率なことはしません。
運転手さんは編成番号を見て運転台に乗り込みます。
運転台のあるいは乗務員扉のガラス窓の所に「N25」とか
シール状のものが貼ってあるのがそれです。
改造などがある場合を除けば、車番は半永久的なものですが、
編成番号は配置区所が変われば変わるのが当たり前ですし、
同一区所でも編成替えがあれば変わるのが原則ですから、
車番のようにボディーに直接書き込むようなことはあまりありません。
しかし、この編成番号こそが、
その電車が、その現場でどのように使われるかを示しているのです。

7-6 車番 (番台区分)

車番が固有番号であることには違いありません。
編成毎にまとめて改造する場合もあるでしょうが、
原則は1台1台にについて、改造工事が行われるのです。
「JR電車編成表」では、そのような個別の変化にも対応しています。

たとえば同一編成であってもクーラーの形状が違うという場合もあります。
クーラーの形状は「7-2形状 クーラー」のところで述べているように、
ハコの上に表記されるのが原則ですが、個別に違う場合、
太字にしフォントも変えてあります。
どのように違うかということについては、欄外に☞マーク以下で記されています。

また同一編成であっても車体色が違うという場合もあります。
車体色は「5 車体色」のところで述べているように、
見出しとなる系列の下に( )付きで表記されるのが原則ですが、
個別に違う場合、その車両にしアンダーライン(波線)を付してあります。
どのように違うかということについては、これも欄外に☞マーク以下で記されています。

また同一編成であってもアコモデーション改善(リニューアル)工事が済んでいるものとそうでないものが混ざっている場合もあります。
この場合車番を太字に変えて区別してあります。
また、その車両にしアンダーライン(波線)を付して示すこともあります。
いずれにせよ、これも欄外に☞マーク以下で記されています。

凄いですね。「至れり尽くせり。」とは、まさにこのことをいうのです。

鉄道資料室>JR電車編成表の読み方