本文へスキップ
J鉄局の珍車ギャラリー

京阪電気鉄道 10000系 7両編成

ギャラリー

「単なる寄せ集め とは言わないで。」
−京阪電気鉄道 10000系 7両編成

鉄道車両には系列という用語があります。
103系とか7000系とかいうやつですね。
黎明期の電車はというと自動車と同じく単独で走行するものでした。
いつしか機関車のように他の客車を従えて走るようにもなってゆくのですが、
パートナーを固定することで、
片側の運転台をパートナーに肩代わりさせたりすることが可能になりました。
電動車自体も大型化、高出力化するに及んで、機器を分散して搭載、
電動車2両セットで走行できるような構造にもなってゆくのです。

この一括りのグループを系列(シリーズ)と呼びます。
103系なら クモハ103−モハ102−クハ103 など数形式の車両で構成されることになります。
ですから概ね製造時期も同じになるわけです。
もっとも同世代の車両でも特急用、各停用など使用目的が違えば別系列になります。

言い方を変えると使用目的が同じでありながら系列が違うということは、
製造時期が異なるということであり、
そこから設計思想の違いや、テクノロジーの進歩が汲みとれるということが多いのです。

そこで、京阪10000系です。2002年にデビューしました。
1900系、2600系の代替用として新造されたアルミ合金製車体のインバータ電車です。
基本的には7200系とベースとしましたが、バリアフリーや環境面に配慮しながらも、
製作コストを抑えるための見直しがなされている点が特徴です。
すなわち床面高さを20mm下げてホームとの段差を縮小し、
フルオートエアコンによるきめ細かい空調を行うとともに、
UVカットガラスを採用することで窓周りの工程を簡素化しています。
当初、青一色の塗装でしたが、これもコスト削減に繋がったと思われます。
交野線、宇治線でデビューしたというのも衝撃的でした。
それも4両編成のワンマン運転仕様です。
国鉄時代には歯牙にもかけなかった片町線や奈良線がライバルに変貌、
支線用とはいえ、旧型車でお茶を濁してはいられなくなった現状の厳しさが見て取れます。

その10000系が本線でも活躍することになったのです。
もちろん4連のままというわけにはいきません。
他の本線用列車に合わせ中間車を増結、7連に組成しました。
さて、その中間車が、10100形、10700形、10750形 の3両なのですが、
じつはこれ新造車ではありません。
10100形が1995年製の旧7200系車両、
10750形、10700形 が1997年製の旧9000系車両というのです。
古い系列の車両を増結して編成を仕立て直すというのは特に珍しいことではありません。
しかし、それが3系列に及ぶというのは珍しいですね。

でもなぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

一口で言うと編成両数の見直しです。
本線列車のすべてを8連で運用できれば、何かアクシデントがあったとき、
他の編成ですぐに対応できて具合が良いのですが、
やはり列車種別、運行時間によってその需要に差があります。
廃車が進んでいる2600系などは7連が多いのですが、
その後釜に8連を充当してもあまり意味がないとなれば、
既存の8連を7連化するしかないわけです。

7200系も9000系も8連ですが、そこから1両ずつ抜き取って7連にし、
10000系4連に組み込むことでこれもまた7連にするということにしたのです。

そんなわけで「寄せ集め」たわけなんですが、見た目にもそんな感じはしないですね。
ちなみにいずれも「一般車」で車体はアルミ合金製。
10000系中間車の車体寸法は18,700×2,780×4,195mmで
対して9000系と7200系とは高さが4,185mmと1cm低くなっています。
そう言われてもわからないですよね。
あえて、識別ポイントはといえば、車体の裾部分が直角か、曲線か。
というところですが、
まあ基本的には10000系は9000系7200系と同仕様です。
中間M車となるのが7200系からの1両で、
中間T車が9000系からの2両といっても、
それは性能上の問題ではなく、
7200系が3編成だったのに対し、9000系が5編成と
その数が多かったからだと思われます。

もちろん7200系と9000系は、同じではありません。
ここで9000系について見てゆきます。

ラッシュ時に2ドアクロスシート車の8000系「特急車」を用いた場合、
どうしても乗降時間がかかってしまい列車ダイヤに支障が生じてしまいます。
そこで、3ドアでありながらセミクロスシートを採用した9000系が登場したのです。
7200系のセミクロスシート版が9000系といって良いでしょう。
当初は濃淡グリーンで塗り分けたその間にパステルブルーのラインを入れて
当初「一般車」とは違うのだと区別していました。

ところが、中之島線開業に合わせ3000系が投入されました。
中之島線のイメージアップを図る目的もあり
快速急行用に大量導入された3000系は、
9000系と同じく3ドアセミクロスシート車です。
その後、中之島線の輸送見直しもあり、
30000系は9000系の役割をも果たしてしまうことになってしまいました。
その結果、9000系はオールロングシートに改造、
「7200系と特に違いはない。」ということとなってしまうのです。

ですから、3系列に及ぶといっても、3世代というのではなく、
「かつては使用目的が違っていた。」というのが正しいところです。

今となっては3系列とも「一般車」に区分されるわけですが、
9000系は、もと「特急車」としても用いられる系列として作られ、
10000系は、もともと支線をテコ入れするために作られたものなのです。

そう、京阪は車両に対して、
かくもきめ細やかな配慮を惜しまない鉄道会社なのです。
10000系7連をして、
「ただの寄せ集め」とかたづけてしまわないでいただきたいところです。

−鉄道車両写真集−
京阪 7200系 9000系 10000系
へJUMP