鉄道資料室 難読駅100 選定基準 2007.2.12 UP

究極の難読駅100(JR編)   
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 難読駅をコンセプトにしているHPがあります。
多くは雑誌などでも取り上げられる有名な難読駅をベースにご自身が「これは読めない!」というものを加え、
なお投稿があった駅名を加えてゆく、いわば加算型が多いようです。

 しかしこれでは、なぜA駅があってどうしてB駅がないんだ。という問題に常にぶち当たります。そこで
私は、比較してみて、よりこちらの方が難読だと思えるものを絞り込んでゆくことにしたのです。つまり消去法です
このほうが難読であるという意味を先に検証できる分、より客観的と考えたわけです。
 そこで私は、JRの全駅リスト(全4562駅_貨物駅は除く)をかたっぱしからチェックすることにしました。
そしてまず、これを1割をめどに、424駅にまで絞り込み、つぎにベスト200、そしてベスト100と絞り込んでゆくことにしたのです。
 ところが言うは易く、行うは難し。
客観的な方法といってはみたものの、いざとなると客観的な基準などないのです。
「それは、関西人だから読めるだけだ。」
「それが読めないのは、単に私に学がないからだ…」自問自答するほどに立ち留まってしまいました 

 駅名とは、その利用者にとって、わかりやすいように命名されるべきものです。
ですから大概、駅が設置されるその地名に由来するものが多く、
誰にも読めない地名をわざわざ駅名にすることはないはずです。
 つまり難読駅というのは、その駅を日常的に利用することが想定される地元の人々にとっては、
別に難読でも何でもないのです。

 たとえば、阪急電鉄には十三駅というのがあります。十三は普通に読めば「じゅうさん」です。
しかし関西人。少なくとも阪急沿線に住んでいる我々にとっては、「じゅうそう」なのです。ただし、
こだわっていうと「重曹」ではなく「弦楽四重奏」のじゅうそうに近い発音で、むしろ「じゅうそ」といっても十分に通じます。
これほどに地名の読みとは奥の深いものなのです。
まあ、発音やアクセントにまで、こだわっていると先に進めませんので、十三は「じゅうそう」として話を進めます。

 札幌を「ふだほろ」と読む人はいないでしょう。言うまでもなく「さっぽろ」です。
しかしこれだって凄い当て字なわけで、外国の方に「Why?」といわれたら、
「先住民族であるアイヌ民族が付けた地名に無理矢理漢字をあてはめたから。」と答えはしますが、
もし、つっこまれたら、「これはこう読むの!」としか答えようがありません。

 神戸はどうでしょう。おそらく95パーセント以上の人が「こうべ」と読みますね。
しかし、岐阜県の人々の多くはこれを「ごうど」と読むでしょう。また、
三重県伊賀地方の方なら、普通にこれを「かんべ」と読むわけです。
 そこで「こうべ」が難読でなく、「ごうど」が難読というのなら、これは矛盾しています。

 ところが、札幌と神戸には共通点があります。ともに道庁/県庁所在地です。政令指定都市です。
こういっては何ですが、兵庫県神戸市と岐阜県神戸町では比べものになりません。
別に神戸町をバカにしているわけでも何でもなく、その地域の大きさ、人口とともに知名度についても格差があるのはどうしようもありません。

 神戸を「こうべ」と読むんだといっても日本人なら、誰も驚きません。
でも「近鉄揖斐線に乗って旅をしていたときに、駅の看板をみて、「へえ。これで「ごうど」って読むのか。」
と知ったときは、やはり驚きでした。人に教えたくなっちゃいました。
 
 つまり難読駅をご紹介すると言うことは、その由来となるところの地名が、
より地域に限定された読み方であるものを、より多くの皆様にお知らせすることとなるのではないか
と考えたのです

 そこで、難読駅を絞り込んでゆくにあたって、次のような原則をもりこむことにしました。つまり、自治体の代表駅など
自治体名と同じ名を持つ駅は、いかに難読であっても、これを市区郡町村の順でこれを除外してゆくことにしました

 ですから、ベスト200に絞り込んだ段階で、市の名称を持つ駅は、全て姿を消しました。
 
  例;鴻巣 八街、福生、各務ヶ原、瑞浪、羽咋、下松、御所、美唄、川内など

 しかし、平成の大合併によって、多くの市郡区町村が姿を消し、また一方で新たに誕生しています。
いったい、いつを基準にするんだといわれたら、また立ちすくんで一歩も進めなくなってしまいます。
ですからすでに現存しない市郡区町村であっても、私の記憶にあれば除外することにしました。
 アマチュア無線で、日本の全市全郡全区町村との交信を目指してきた経験にものをいわせたいところです。
 
 もちろん、自治体名となっているとはいえ、除外するのには惜しい難読駅が幾つもあります。
また前述したように、すでにその自治体が消滅している場合もあります。
これを除外するのは惜しいなあ。と思いながらも作業を進めてゆきました。
ところが、結局100まで絞り込むとなると、自治体名と同じ名を持つ駅は全て姿を消してしまったのです。
 ですから正味、鉄道がなければ、人々の記憶の彼方に消え去ってゆくような地名をもつ駅が残ってきたのではないか。と思っています。

 次に思いもしない読みだったもので、つい間違えてしまうような「まぎらわしい駅」も除外してゆくことにしました。
例えば「長門峡」駅です。普通に日本史や地理の勉強をしていれば、「ながときょう」と読んでしまうところです。
しかしなんのことはない、これはそのまんま「ちょうもんきょう」と読むのです。
「波止浜」駅も普通に読めば波止場の「はと」から「はとはま」といいたいところですが、
「止」は、中止の「し」です。先入観さえなければ、読めるパターンにはいります。
 こんな例は、他にもあり、千里(せんり−ちさと)八尾(やお−やつお)などがこれに該当します。
大阪の人間なら、まず前者で読んでしまいます。
これはこれで、なかなかおもしろいので、別にまとめてご紹介したいところです。
 「まぎらわしい駅」といえば、大村線(JR九州)の諏訪駅があります。長野県ではないということで、
「おっ?」と思ってしまうところですが、これも長野県諏訪市のおかげで読めてしまうので、こういうのも除外しました。

  さて、このように外していっても、なかなか100には絞り込めません。
 
 惜しくも選に漏れた駅と、めでたくランクインした駅をいくつかご紹介します。苦渋の選択過程を、ご覧ください。

 ■野幌(のっぽろ)駅
 札幌を「さっぽろ」と読めるなら野幌も「のっぽろ」と読める。これは学習効果と判断し、除外しました。
このように半ば強引に外した例は、結構沢山あります。
 
 ■留辺蘂(るべしべ)駅
 「留辺蘂(るべしべ)」は、常呂郡留辺蘂町(06.3消滅、現在北見市)の代表駅でしたから、ランク外となっていますが、
もし町名でなくても、「蘂」は「雌蘂(めしべ)」の「しべ」であって、辞典を引けば何とかなります。
「留」も「留萌」の学習効果でなんとかなります。「辺」を「べ」と読ませる強引さとの合わせ技で、かろうじてランク入りするというレベルです。

 □驫木(とどろき)駅
 「驫木(とどろき)」の「」については、大修館書店の漢和辞典『漢語林』を引いても出てきません。
」の異体字ではないかとも思いますが、専門家でもないとわからないような難解な漢字で、
こんな漢字を駅名にすること自体、なぜ?と問いたくなるような超難読駅です。当然ランク入りです。

 ■太秦(うずまさ))駅
 結構有名な難読駅に「太秦(うずまさ)」があります。でも「太秦(うずまさ)」は京都にあるテーマパーク「東映映画村」で有名です。
 じゃあ、有名であるという基準は何なんだ。
と問われれば答えに窮する私ですが、
駅名以外の要素ですでに有名になっているものは、あえてベスト100からは、外してゆくことを原則としました。

 ■佐用(さよ)駅
 発音やアクセントには踏み込まないつもりでしたが、「じゅうそ」を「じゅうそう(十三)」と読む類、あるいはその逆となる
「佐用(さよ)」は、「さよう」と読んでも通じてしまうという点から外さざるを得なくなってしまいました
でも、これについては、ちょっとお叱りを受けそうです。
「平成の大合併以後も佐用郡佐用町は存在するのだから、勿体つけずともお前の基準なら外すべき所だろう。」と…
 ところがどっこい佐用郡佐用町は「さよう」郡「さよう」町であって「さよ」町ではないのです。
だからベスト100直前まで生き残っていたのです。
 しかし調べてみると、昭和30年の合併までは、「さよ」郡 「さよ」町で、「さよ」という読みは当地の古名であったということがわかりました。
それが駅名として残っていたことは、考えてみれば、実に意味のあることだったのです。


 特に意識したわけではないのですが、予想外に多くベスト100入りしたのは、JR西日本です。
 「古道を歩く」ことをコンテンツとするHPを拝見しましたが、
「歴史のある町並みを多く残す、西日本の地名に難読地名が多くある。」とされていることに合致していることになるでしょう。
 
 またアイヌ語を起源とする難解な地名が多いはずの北海道に、ベスト100入りした駅が、少なかったのも意外でした。
 思いの外、当て字で読めてしまうこともありましたが、路線そのものが、ここ20数年ほどの間に数多く廃止され、
貴重な難読駅が消滅してしまったことも、その大きな原因です。

 地名は貴重な文化遺産です。平成の大合併はその貴重な遺産を失うことでもあります。
本来なら、消滅自治体名をもつ駅は、意識して残しておきたい気もしましたが、
あくまで駅名となったことで全国に知られることになった難読駅を優先することにしました。

 願わくはこれらの駅名が末永く存続することを祈るばかりです。

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